翻訳家・通訳インタビュー

翻訳家 中西真雄美さん

Q:翻訳を始めたきっかけは何ですか?

学生時代から語学が好きだったのですが、大学を卒業して最初に就職した会社が英語とは無縁の職場だったので、ゆくゆくはフリーで仕事ができる翻訳の職をさがして再就職を考えました。そこで翻訳者の募集をしている特許の分野に興味を持ち、特許事務所に的を絞って応募しました。ただ、翻訳者として採用されるのは、経験者か理系にかぎる事務所が多かったため、最初は事務職で入所し、そこで特許の翻訳を勉強させてもらい、のちに翻訳者として仕事をさせていただくようになりました。その後、出版翻訳にも興味を持つようになり、翻訳学校に通うようになりました。

Q:翻訳に役立つ語学力をどのようにしてつけましたか?

実務(特許)翻訳は勤め先の事務所で、出版翻訳は通信教育や翻訳学校で学びました。

Q:実務翻訳とは違い出版物などの翻訳はセンスが問われると思いますが、気を付けていることはありますか。

翻訳をする際に心がけているのは、とにかくこまめに辞書を引くこと。あとは和書・洋書を問わず、本をできるだけ多く読むことです。

Q:プロの翻訳者になるためにどのように仕事にアプローチをしましたか?

実務(特許)は、おもに元の勤務先や元同僚で弁理士として独立された方たちの事務所から仕事をいただいているので、とくにアプローチはしていません。それ以外では、特許事務所で在宅翻訳の募集をしているところに応募して採用されたケースもあります。
出版のほうは、師事していた先生にリーディングや下訳の仕事を紹介していただきました。また、自分でもリーディング要員の募集に応募するなどして、出版社とつながりを築いていきました。

Q:翻訳の仕事を長く続ける秘訣はありますか?

体力勝負の仕事なので、健康管理に気をつけること。実務翻訳であれ、出版翻訳であれ、社会人としてきちんとした態度をとること。あとは同業者の仲間をたくさんつくって、情報交換をすることですね。

Q:翻訳の仕事をしていて良かったと思うことは何ですか?

出版翻訳については、自分の訳した本が書店に並んでいるのを見るとやはり嬉しいものです。あと、アマゾンなどで、良いレビューを入れていただいたりすると、見知らぬ人にでもお礼を言いに行きたい気分になります。

Q:今の翻訳業界全般の現状を教えてください。

出版翻訳は、翻訳者としてデビューするのも難しいですが、それだけで食べていくのはもっと難しいです。
実務翻訳のほうも、ここしばらくの不況で単価が下がる傾向にあり、厳しい時代です。

Q:翻訳者になりたい人へのアドバイスを聞かせてください。

プロになるまでも大変で、プロになってからも経済的には大変な仕事ですが、大きな達成感を得られる仕事でもあると思います。
なんとなく勉強を続けていればプロの翻訳者になれるというものでもありませんから、やりたい分野を決めたら、プロになるための道をいろいろな方向からさぐり、挑戦してください。




翻訳家 中西真雄美さん
プロフィール
大阪外国語大学卒。卒業後、コンピュータ関連の会社に就職。その後、特許事務所に8年間勤務したのちフリーに。現在は、おもに特許とノンフィクションの翻訳に携わる。おもな訳書:『脳が教える!1つの習慣』(講談社刊)、『すべては「前向き質問」でうまくいく』『永久不滅のエレガンスのルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)、『幸せな出産のために』(武田ランダムハウスジャパン刊)など。