翻訳あれこれ

翻訳に役立つ書籍

プロの先生に書籍についてお伺いしました。

「翻訳に役立つ書籍」

The Elements of Style, 4th Edition (William Strunk and E.B. White)

初版から50年以上も版を重ねながら読み継がれてきた、英文ライティングのバイブルです。著名な作家達が挙げる推薦図書にも、よく選ばれています。仕事で英文を書く人ならば、必ず手元に置いて、定期的に読み返したい本です。

The Chicago Manual of Style, 16th Edition (University of Chicago Press Staff)

初版から100年以上も版を重ねている、ロング&ベストセラーのスタイルガイドです。米シカゴ大学が編纂したものですが、アメリカに限らず世界中で使われています。最も代表的なスタイルガイドなので、クライアントからスタイルガイドの指定がなければ、これを参照しておけば間違いありません。「ここは大文字にすべき?コンマはどこに打てばいいの?」など、迷ったらページを開いてみましょう。オンライン版もあります。

「お薦めの参考書」

毎月数多くの参考になる書籍が新しく出版されています。それらのうち、ご自分の長年の経歴からくる知識や英語力からくる感覚に合うものでしたら、どれでも助けになると思います。

― 英文対照 朝日新聞天声人語 (朝日新聞論説委員室 国際編集部)

天声人語の和文と英訳文が、同じページに掲載されたものです。天声人語には、日本語独特の表現が多く、その段落構成も、理路整然とした英語の文章とは大きく異なります。また、その内容には、日本独特の習慣や文化が取り上げられることも多く、翻訳者泣かせの文章といえます。しかし、訳文では、それらが非常に自然な英語で、原文の意味を大きく損なうことなく訳されているので、原文と訳文を比較しながら読み進めば、とても良い勉強になります。まず、原文だけを読んで、自分で翻訳した後に、本書の訳文と自分の訳と比べるのも、良い勉強法の一つになります。


― NHKラジオ 実践ビジネス英語テキスト中の”Writer’s Workshop”

ワシントン・ポスト、UPI通信、ダウ・ジョーンズなど米国ジャーナリズムの第一線で長く活躍してきた佐藤昭弘氏による、翻訳講座。英文ライティングの名手である佐藤氏の優れた参考訳からは、感性豊かな表現や、読みやすい英文にするための工夫など、学べる点が多くあります。また、解説では間違いやすいポイントや、表現のバラエティなども学べます。内容は中・上級者向けだが、初級者でも勉強のヒントになることが多いので、読んでみて欲しいです。自分で翻訳したものを投稿することもできます。


― 和英翻訳ハンドブック   (根岸裕)

日経国際ニュースセンター(Nikkei News Bulletin Inc.=NNB)の翻訳者向けに作成されたハンドブックをベースにして編集された一般学習者向けの翻訳テキストです。原文と、訳例、さらに、ネイティブエディターによるその訳例の直しと、解説の構成で、日本人が間違いやすいポイントが徹底的に解説されています。例に挙げられているのは、日本経済新聞に掲載された記事なので、題材は経済に偏っているものの、取り上げられているポイントは、「何を主語にするべきか」、「修飾語が長くなりすぎたときはどうすれば良いか」など、どんな分野の翻訳でも役立つ内容です。読み進めるだけでも、勉強になることは多いが、やはり、原文を読んで、まず自分で翻訳をした後に、訳例やその後の解説を読むようにすると、さらに良いと思います。


― 最新日米口語辞典 (エドワード G.サイデンステッカー 松本 道弘)

英語にはなりにくい日本語表現の英訳が掲載された辞典です。たとえば、「ああ言えばこう言う」、「足を洗う」「頭ごなしに叱る」などの表現が並びます。複数の訳語があるものには、その使い方が解説されており、各表現を使った例文も掲載されているので、「調べる」ためだけに使う辞書ではなく、「読む」ためにも使える辞書となっています。